呪術廻戦休載前後の思い出

 呪術が休載したのは、コミックスでいうと17巻、禅院家壊滅のあたりである。

 僕はジャンプを毎週買って読んでいるのだが、当時の呪術は本当にヤバかった。

 と言っても面白さ自体は保っていた。しかし、絵がもうガタガタで休載直前には1ページペン入れをしていないほどであった。

 正直17巻が始まるあたりの乙骨戦後にはちょっと怪しいかな、というコマが増え始めていたので、当時の僕も体を壊す前に休んで欲しいと思っていた。

 

 なぜそのような事態になったかというと、やはり仕事量の多さが挙げられる。

 当時のジャンプはチェンソーマンや鬼滅の刃などの大ヒット作や、ハイキューやネバランなど長らくジャンプ本誌を支えてきた漫画たちの完結によってセンターカラーを載せられるほどの実力を持つ漫画が少なかった。

 また、アクタージュの予期せぬ打ち切りも大きい。

 この漫画はかつて呪術やチェンソーと共に次期看板候補として期待されており、原作と作画が別のためかセンターカラーを頻繁に請け負っていたのだが、原作者の痴漢によって打ち切りになってしまった。

 

 ジャンプ編集部は昔と違い作家を休ませる方針を取っていたのだが、呪術は作者の希望によって休載をしないでいた。

 そうなると当然仕事の一環としてセンターカラーを任されるため、仕事量も増える。

 さらにはアニメの監修までもやっていたため、他の作家よりも一際忙しかったのだろう。

 

 休載は最初一ヶ月と言っていたのだが、結局は二ヶ月取っていた。

 正直一ヶ月程度で体の不調が全部治るとは思えなかったし、休載の延長はむしろ安心した。

 だけど出来れば先に言って欲しかったともちょっと思う。

 

 そして休載が明けた後の呪術だが……正直言葉に困る感じはした。

 絵は持ち直していたが、ちょいちょいハンターハンターみたいなコマがでできたし、内容も秤先輩の勧誘というパッとしない物で、直哉という魅力的なキャラが迫力のある戦いをしていた休載前と比べても面白さは明らかに減っていた。

 その時はもう呪術ダメかなと思っていた。休載明けということで期待も大きかったので、今見るとそう思うほどの出来ではないが、当時はこのままの調子が続くなら読まなくなる日も近いかもと思っていた。

 

 その諦観が裏切られたのは、日車が出てからだ。

 日車は呪詛師版ナナミンとも言えるようなキャラクターで、作者の持ち味が前面に出ていた。

 日車が出てからは本当に面白い。作者自体が持ち直したようにも思えるし、そもそも死滅回遊が始まったから面白くなったのかもしれない。

 

 今の呪術は定期的に休みが入るものの、絵は前より綺麗だし話も面白いので、作者にはこの調子で体を大事に完結まで描き切って欲しいと思っている。